NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell シリーズ比較レポート

NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell シリーズ GPU 詳細比較
(Workstation Edition・Max-Q Workstation Edition・Server Edition)
技術仕様
NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell シリーズは、最新の「Blackwell」アーキテクチャを採用したプロ向けGPUで、デスクトップワークステーションおよびサーバー向けの最上位モデルです [1]。全モデル共通の基本仕様としてCUDAコア数は24,064基(GB202 GPU上のSM 188基有効)で、96GBの超高速GDDR7メモリ(ECC対応)を搭載します。メモリ帯域幅は1,792GB/秒に達し、512ビットの大規模メモリインターフェースによって実現されています [2]。接続はPCI Express Gen5 x16に対応し、映像出力はDisplayPort 2.1を4ポート備えます [2]。RTX PRO 6000シリーズには用途に応じて Workstation Edition(ワークステーション向け)、Max-Q Workstation Edition(省電力ワークステーション向け)、Server Edition(データセンター向け)の3つのエディションが存在します [3]。各エディションでハードウェア構成(コア数・メモリ容量)は共通ですが、TDPや冷却方式、カードサイズが異なります。
項目 | Workstation Edition | Max-Q Workstation Edition | Server Edition |
---|---|---|---|
GPUアーキテクチャ | NVIDIA Blackwell | ||
CUDAコア数 | 24,064 基 | ||
Tensorコア数 | 752 基 | ||
RTコア数 | 188 基 | ||
GPUメモリ | 96 GB GDDR7 (ECC対応) | 96 GB GDDR7 (ECC対応) | 96 GB GDDR7 (ECC対応) |
ディスプレイ出力 | DisplayPort 2.1 ×4 | DisplayPort 2.1 ×4 | DisplayPort 2.1 ×4 |
最大消費電力 (TDP) | 600 W | 300 W | 最大600 W (構成に応じ可変) |
対応スロット | PCI Express 5.0 x16 | PCI Express 5.0 x16 | PCI Express 5.0 x16 |
カードサイズ (高さ×長さ) | 約5.4インチ × 12.0インチ (2スロット) |
約4.4インチ × 10.5インチ (2スロット) |
約4.4インチ × 10.5インチ (2スロット) |
冷却方式 | デュアルフロースルー (アクティブ) | ブロワーファン (アクティブ) | パッシブ (ファンレス) |
Workstation Edition はデスクサイドのワークステーションで最高性能を発揮するモデルで、TDPは600Wに達します。Max-Q Workstation Edition は省電力重視で、TDPを300Wに抑えたブロワーファン仕様です。Server Edition はデータセンターサーバー向けのパッシブ冷却モデルで、高密度ラック環境で最大8基までの搭載が想定されます [4]。
アーキテクチャの特徴と前世代からの性能向上
RTX PRO 6000シリーズの核となるBlackwellアーキテクチャは、前世代Ada Lovelaceから様々な点で性能強化が図られています。新しいSM(Streaming Multiprocessor)は処理スループットが最大1.5倍に向上し、AIをシェーディングに組み込む「ニューラルシェーダー」の導入によって次世代のAI活用型グラフィックスを実現します [1]。第4世代RTコアは前世代比で最大2倍の性能を発揮し、非常に複雑で物理的に正確なシーンのリアルタイムレンダリングを可能にします [1]。Tensorコアも第5世代となり、演算性能は最大4000 AI TOPSに達します。新たに超低精度のFP4データ型がサポートされ、DLSS 4などAIを活用した次世代グラフィックス機能が強化されています [1]。
Blackwell世代ではメモリ容量・帯域も飛躍的に増強されました。前世代のRTX 6000 Ada(48GB)から2倍となる96GBのVRAMを搭載し、これはコンシューマ向け最上位モデルRTX 5090(24GB)の4倍という前例のない容量です [5]。メモリは新世代のGDDR7を採用し合計帯域1.8TB/sに達しており、巨大なデータセットや高解像度テクスチャを扱う際のスループットが大幅に向上しています [2]。また、前世代Ada世代の性能を大きく超えるPCIe Gen5対応や、第9世代NVENC・第6世代NVDECでプロ向け映像処理機能が拡充されるなど、全方位で性能アップが実現されています。デスクトップ版(6000および5000シリーズ)は MIG機能にも対応し、単一GPUを最大4分割して仮想インスタンスとして運用することが可能です [1]。
各エディションの用途と設計意図
Workstation Edition(ワークステーション版)
デスクトップワークステーションにおいて単体~少数のGPUで最高性能を発揮するモデルです。ゲーム開発、高度な3D可視化、AIモデル開発など、プロフェッショナルがデスクサイドで行う高負荷作業に対応できるよう設計されています。大型ヒートシンクとデュアルファンによる強力な冷却により、長時間のレンダリングやシミュレーションでも安定してブーストクロックを維持し最高性能を引き出せます。
Max-Q Workstation Edition(省電力ワークステーション版)
消費電力と発熱を抑えた設計で、複数GPUを高密度に搭載する用途を念頭に置いたモデルです。TDPは300Wに制限されており、シングルフロー排気のブロワーファンを搭載することで4基以上の多GPU構成にも対応しやすくなっています。省電力化のため動作クロックは下がるものの、ワークロードによっては高い電力効率を発揮し、並列処理を要する大規模レンダリングや分散型の機械学習などで有効です [3]。
Server Edition(サーバー版)
データセンターやクラウド環境での利用を念頭に置いたモデルです。パッシブ冷却を採用し、ラックマウントサーバーの強力なシステムファンによるエアフローで冷却する設計となっています。1台のサーバーに最大8基まで搭載可能で、電力制限を調整することでデータセンターの電力枠内で柔軟に性能を引き出せます。仮想化(MIG)による分割運用にも最適で、大規模なクラウドAI推論や仮想ワークステーション環境などにも対応できます [4]。
想定されるユースケース
生成AI・AIインフラ: 第5世代Tensorコアの持つ圧倒的なAI演算性能と96GBの大容量メモリにより、大規模な生成系AIモデル(大規模言語モデルなど)の高速な推論や微調整に対応できます。オンメモリで巨大モデルを扱えるため、推論サーバーやAI研究開発用ワークステーションとして強力です [1]。
3Dレンダリング・可視化: レイトレーシング性能が大幅に強化され、リアルタイムレイトレーシングによるフォトリアルな可視化やVFXの高速化が見込めます。96GBのVRAMにより複雑なシーンデータや大容量テクスチャもまとめて格納可能で、VRや設計シミュレーションなどにも適しています [1]。
コンテンツ制作・ゲーム開発: FP32で約125TFLOPSと推定される高いシェーダー性能により、DCCツールやゲームエンジンでのリアルタイムGI・パストレーシングが円滑に行えます。膨大なVRAMを活かして高解像度アセットを一挙に読み込めるため、クリエイターの制作効率が大幅に向上します [3]。
データサイエンス・シミュレーション: PCIe Gen5の高速データ転送と大容量メモリにより、メモリ集約型の解析(データフレームをGPUメモリ上に格納する機械学習など)や大規模CAEシミュレーションで高いパフォーマンスを発揮します。映像解析やストリーミングを伴うユースケースにも対応可能です。
価格帯と提供時期(北米・欧州)
RTX PRO 6000 Blackwell シリーズは2025年3月に開催されたGTC 2025で公式発表されました [3]。北米市場では2025年4月からWorkstation EditionおよびMax-Q EditionがPNYやTD SYNNEXなどを通じて順次出荷され、主要ワークステーションメーカーの製品に搭載される形で提供開始される見込みです [6]。Server EditionについてはCiscoやDell、HPE、Lenovoなどによるサーバー製品やAWS、Azure、Google Cloudといった大手クラウドでの提供が2025年後半に始まる予定と発表されています [1]。
価格については、NVIDIA公式サイトからは具体的なMSRP(希望小売価格)は発表されていませんが、米国のITリテーラー「Connection」での製品リストによると単体想定価格は約8,565ドルとされており、これは前世代のRTX 6000 Adaが発売当初6,799ドル前後だったのと比べて約26%上昇しています [6]。コンシューマ向け最上位GPUよりも大幅に高価格となる見込みで、Tom’s Hardwareの報道では「プロ向けモデルは同等コンシューマGPUの4~5倍の価格帯になりやすい」と分析されています [4]。
日本円換算では1ドル=130円前後として概算110万円超(税別)となるため、導入時は法人向け受注販売が中心になると考えられます。また2025年後半以降には、下位モデルのRTX PRO 5000 / 4000 シリーズやノートブック向けモデルなども投入される見通しです [1]。
参考文献
- "NVIDIA Blackwell RTX PRO Comes to Workstations and Servers for Designers, Developers, Data Scientists and Creatives to Build and Collaborate With Agentic AI" – NVIDIA Newsroom – https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-blackwell-rtx-pro-workstations-servers-agentic-ai
- "RTX PRO 6000 Blackwell Series – Specifications" – NVIDIA – https://www.nvidia.com/en-us/products/workstations/professional-desktop-gpus/rtx-pro-6000-family/
- "Nvidia RTX Pro 6000 up close: Blackwell RTX Workstation, Max-Q Workstation, and Server variants shown" – Tom's Hardware – https://www.tomshardware.com/pc-components/gpus/nvidia-rtx-pro-6000-up-close-blackwell-rtx-workstation-max-q-workstation-and-server-variants-shown
- "Professional and server GPU solutions typically sell for 4–5× more than equivalent consumer GPUs" – Tom's Hardware – https://www.tomshardware.com/pc-components/gpus/nvidia-rtx-pro-6000-up-close-blackwell-rtx-workstation-max-q-workstation-and-server-variants-shown
- "Nvidia launches its fastest GPU ever: Nvidia RTX Pro 6000 Blackwell Workstation Edition is an enhanced version of the RTX 5090 with more of everything" – TechRadar – https://www.techradar.com/pro/nvidia-launches-its-fastest-gpu-ever-nvidia-rtx-pro-6000-blackwell-workstation-edition-is-an-enhanced-version-of-the-rtx-5090-with-more-of-everything
- "Japanese Retailer Reportedly Prepping NVIDIA RTX PRO 6000 96 GB Stock For Sale in May, Leak Indicates $8435+ Pricing" – TechPowerUp – https://www.techpowerup.com/334622/japanese-retailer-reportedly-prepping-nvidia-rtx-pro-6000-96-gb-stock-for-sale-in-may-leak-indicates-usd-8435-pricing