RTX 6000 Ada vs RTX PRO 6000 Blackwel

RTX 6000 Ada と RTX PRO 6000 Blackwell の比較 – 大規模LLM開発向け
本記事では、NVIDIAのプロ向けGPUであるRTX 6000 Ada(Ada Lovelace世代)とRTX PRO 6000 Blackwell(Blackwell世代)の違いを、Linux + PyTorch環境での大規模なLLM(Large Language Model)開発を念頭に比較します。両者ともAI開発や高度なシミュレーション向けのハイエンドGPUですが、アーキテクチャ世代の違いにより性能や仕様が大きく異なります。以下では、性能、VRAM(メモリ容量)、消費電力、冷却方式、物理サイズの項目ごとに詳細を解説します。
目次
項目 | RTX 6000 Ada | RTX PRO 6000 Blackwell |
---|---|---|
アーキテクチャ | Ada Lovelace (第3世代RTコア / 第4世代Tensorコア) | Blackwell (第4世代RTコア / 第5世代Tensorコア) |
CUDAコア数 | 18,176 | 24,064 |
GPU計算性能* (FP32ピーク) |
約91.1 TFLOPS | 約125 TFLOPS |
AI演算性能* (INT8/FP8) |
約1,457 TFLOPS (≈1457 TOPS) | 約4,000 TFLOPS (≈4000 TOPS) |
Tensorコア数 | 568 (第4世代) | 752 (第5世代) |
RTコア数 | 142 (第3世代) | 188 (第4世代) |
GPUメモリ | 48GB GDDR6 (ECC対応) | 96GB GDDR7 (ECC対応) |
メモリ帯域幅 | 960 GB/s | 1792 GB/s |
最大ボード電力 | 300W | 300W (ワークステーション) ~600W (サーバー) |
冷却方式 | 空冷アクティブ(ブロアーファン) | 空冷アクティブ(デュアルブロアー) ※サーバー版はパッシブ |
物理サイズ | Dual-slot, Full-height 長さ約10.5インチ (26.7cm) |
Dual-slot, Full-height 長さ約10.5インチ (26.7cm) |
*FP32およびAI演算性能は公称ピーク値。
性能
計算性能: RTX 6000 AdaはAda Lovelaceアーキテクチャに基づき、CUDAコア数18,176基
を搭載し、単精度浮動小数点(FP32)演算性能は約91.1 TFLOPS
に達します:contentReference[oaicite:0]{index=0}。一方、RTX PRO 6000 Blackwellは次世代のBlackwellアーキテクチャを採用し、CUDAコア数が24,064基
(188 SM)と大幅に増加、FP32演算性能は公称値で約125 TFLOPS
に達します:contentReference[oaicite:1]{index=1}。コア数増加(約32%増)とアーキテクチャ効率向上により、世代間で生の計算性能が大きく向上しています。
AI処理性能: テンソルコアによるAI演算もBlackwell世代で飛躍的に強化されています。RTX 6000 Adaが搭載する第4世代Tensorコアは568基
で、8ビット精度かつスパース(疎行列)活用時に最大約1,457 TOPS
(毎秒1.457兆回の演算)を達成します:contentReference[oaicite:2]{index=2}。対してRTX PRO 6000 Blackwellは第5世代Tensorコアを752基
搭載し、同条件で最大約4,000 TOPS
と公称されています:contentReference[oaicite:3]{index=3}。これはAda世代比でおよそ2.7倍ものAI推論スループットに相当し、LLMの推論・学習において大幅な性能向上が期待できます。なおBlackwellではL2キャッシュも128MBと前世代より増強されており、メモリアクセスの効率が向上しています:contentReference[oaicite:4]{index=4}。RTコア(レイトレーシング性能)もAda世代の第3世代RTコア142基から、第4世代RTコア188基へ強化されていますが:contentReference[oaicite:5]{index=5}:contentReference[oaicite:6]{index=6}、これは主にグラフィックス用途の機能でありLLM開発には影響が小さいでしょう。
VRAM(メモリ容量)
メモリ容量: 最大搭載メモリはRTX 6000 Adaの48GB
に対し、RTX PRO 6000 Blackwellではその2倍となる96GB
に拡張されています:contentReference[oaicite:7]{index=7}。これは単一GPUとして史上最大級の容量であり、大規模なモデルやデータセットをGPU上に載せることが可能です。例えば、従来48GBでは収まりきらなかった超大型のTransformerモデルでも、96GBあれば単一GPUで保持・処理できる可能性が高まります。実際、96GBものVRAMは通常のグラフィックス用途では過剰と言われており、ローカルでのAIトレーニングや推論を見据えた容量と言えます:contentReference[oaicite:8]{index=8}。両GPUともエラー訂正機能(ECC)付きメモリに対応しており、長時間学習時のメモリ誤差検出による信頼性確保が可能です:contentReference[oaicite:9]{index=9}。
メモリ帯域と種類: メモリ技術もBlackwell世代で一新されています。RTX 6000 AdaはGDDR6メモリ(384-bitバス)を搭載し、帯域幅は960 GB/秒
でした:contentReference[oaicite:10]{index=10}。これに対しRTX PRO 6000 Blackwellでは、新世代のGDDR7メモリを採用しバス幅も拡張することで、帯域幅は約1,792 GB/秒
と従来比約2倍に高速化されています:contentReference[oaicite:11]{index=11}。Blackwellは24Gb(3GB)チップを両面実装する「クラムシェル」構成で96GBを実現し、消費者向けGPU(RTX 50シリーズ)の384-bitより広い512-bitバスを用いることで大容量・高帯域を両立しています:contentReference[oaicite:12]{index=12}。この大きなメモリ帯域の向上は、膨大なパラメータを持つLLMの学習時にもGPUコアへデータを効率良く供給できるメリットがあります。なお両カードとも複数GPU間の直接高速共有を可能にするNVLinkブリッジには対応していません:contentReference[oaicite:13]{index=13}。そのため複数GPUで総計100GB超のメモリを活用する場合は、モデルの分割やデータ並列などソフトウェア側で対応する必要があります。
消費電力
定格消費電力: 電力面では、RTX 6000 Adaのボード消費電力は300W
に抑えられています:contentReference[oaicite:14]{index=14}。一方、RTX PRO 6000 Blackwellではフルスペック動作時のボード電力が最大600W
に達すると公称されています:contentReference[oaicite:15]{index=15}。これは大幅な増加ですが、NVIDIAはワークステーション向けには消費電力を300W
に制限した「Max-Q」設定も用意しており、通常のワークステーション筐体や電源でも動作可能です:contentReference[oaicite:16]{index=16}。つまりBlackwell世代では用途に応じて300Wモード(静音・省電力重視)から600Wモード(性能重視)まで選択でき、後者は十分な冷却と電源供給があるサーバー環境で性能を極限まで引き出す設定となります。
性能あたりの効率: 600W構成のRTX PRO 6000 Blackwellは単純計算でRTX 6000 Adaの2倍の電力を使いますが、その計算性能は2倍以上には達しません(FP32性能で約1.37倍増)。したがって最大性能を発揮させる600W動作時はワットあたり性能がやや低下するものの、同じ300Wに制限した場合でもBlackwellはAdaを上回る性能を示すため、世代としての性能効率は向上しているといえます:contentReference[oaicite:17]{index=17}。実際、300Wに制限したRTX PRO 6000でも負荷によっては600W版に迫る動作クロックに達する場合があると報告されています:contentReference[oaicite:18]{index=18}。なお、両カードとも電源コネクタにはPCIe 5.0規格の16ピン(12VHPWR)コネクタを1本使用します:contentReference[oaicite:19]{index=19}:contentReference[oaicite:20]{index=20}。600Wで運用する場合は高品質な電源ケーブル・コネクタの使用と十分な電源容量、および空冷の場合非常に高速なシステムファンによる排熱が必要になる点に留意が必要です。
冷却方式
ワークステーション向け冷却: 両GPUともフルサイズのワークステーションカードとして設計されており、外排気型のブロアーファンによる空冷アクティブ冷却を採用しています:contentReference[oaicite:21]{index=21}:contentReference[oaicite:22]{index=22}。RTX 6000 Adaは従来通り単一の遠心ブロアーファンを備えた2スロット厚デザインでしたが、RTX PRO 6000 Blackwellでは冷却強化のためデュアル(2基)のブロアーファンをカード後部に搭載する設計となっています:contentReference[oaicite:23]{index=23}。筐体内部の空気を吸い込み、GPUやメモリを冷却した熱気をスロット外部へ排出する構造は共通で、サイズも同程度なので、ワークステーション筐体での設置性やエアフロー要件に大きな差はありません。
サーバー向け冷却オプション: RTX PRO 6000 Blackwellにはデータセンター向けにサーバーエディション(パッシブ冷却仕様)
もラインナップされています:contentReference[oaicite:24]{index=24}。このモデルではGPUカード上にファンを搭載せず放熱フィンのみとなっており、サーバー筐体側の高圧力ファンによる強制空冷で冷やす前提です:contentReference[oaicite:25]{index=25}。サーバーエディションは最大600Wでの動作を想定しており、ラックマウントサーバーなど十分な冷却と騒音許容度がある環境で威力を発揮します。一方、RTX 6000 Adaについては公式にはパッシブ仕様は提供されていません(同等チップを用いたデータセンター向けカードとしてL40などが存在しました)が、基本的にAda世代は300W以内で動作するため通常はブロアーファン搭載モデルのみで問題ありません。LLM開発用途でワークステーションに組み込む場合、両GPUとも標準の空冷モデルで運用可能ですが、Blackwell世代は発熱に余裕を持たせたデュアルファン設計のため、高負荷時の冷却安定性で優位と言えます。
物理サイズ
RTX 6000 AdaとRTX PRO 6000 BlackwellはいずれもPCI Expressカード規格上のサイズはほぼ同一で、フルハイト・フルレングス(高さ約4.4インチ、長さ約10.5インチ)、厚さ2スロット占有のカードです:contentReference[oaicite:26]{index=26}:contentReference[oaicite:27]{index=27}。Blackwell世代でファンが2基に増えたものの、カード寸法自体は前世代と変わらず、同じワークステーション筐体に無加工で搭載できます。また両カードともPCIe 4.0 x16接続に対応しています:contentReference[oaicite:28]{index=28}。重量は公称値が出ていませんが、金属製の補強フレームと大型ヒートシンクを備える点は共通しており、いずれも堅牢なスロット固定が推奨されます。出力インターフェースは両者ともマルチディスプレイ用にDisplayPortを4ポート搭載します。Ada世代はDP1.4a対応でしたが:contentReference[oaicite:29]{index=29}、Blackwell世代ではDP2.1にアップグレードされています:contentReference[oaicite:30]{index=30}。もっともLLM開発用途では映像出力の規格差は影響しないため、物理的なサイズ・取り付け互換性という観点では両者に違いはありません。
まとめ
NVIDIAのAda世代からBlackwell世代への移行により、RTX 6000シリーズGPUは大幅なスペック向上を遂げました。特にRTX PRO 6000 Blackwellは、前世代比2倍のVRAM(96GB)と飛躍的に増強されたコア資源により、単一GPUで扱えるモデル規模やデータサイズが拡大し、学習・推論速度も向上します。一方で最大600Wに達する消費電力や高発熱に見合う電源・冷却環境が求められ、導入コストも増大します(米国ではBlackwell版が前世代より約26%高い8,565ドル程度でリストアップされています:contentReference[oaicite:31]{index=31})。
大規模LLM開発においては、モデルサイズや計算需要によって適切なGPUを選ぶ必要があります。48GBでも十分なケースでは省電力なRTX 6000 Adaでも対応できますが、より巨大なモデルを単機で扱いたい場合や高速なトレーニングを求める場合、RTX PRO 6000 Blackwellの持つ余裕ある96GBメモリと高性能は大きなアドバンテージとなるでしょう:contentReference[oaicite:32]{index=32}。いずれのGPUもLinux上でCUDAおよびPyTorchに対応しており、ソフトウェア環境の互換性は確保されています。最終的には、求める性能と許容できる電力・コストとのバランスを踏まえて選択すると良いでしょう。