RTX PRO 6000 Blackwell などの GPU で Power Limit（電力上限）を設定する方法

この記事では、前回の RTX PRO 6000 Blackwell サーバーエディション 4GPU マシンでのパワーリミット検証 を読んだ方向けに、 nvidia-smi を使って Power Limit を確認・変更する具体的な手順 を、コマンドに不慣れな方にも分かるようにまとめました。

1. Power Limit（電力上限）とは？

NVIDIA GPU には、「この GPU は最大で何ワットまで電力を使ってよいか」という Power Limit（電力上限） が設定されています。

  • Power Limit を下げると、消費電力と発熱が下がり、ファンの騒音も軽減される可能性があります。
  • Power Limit を上げる／デフォルトのまま使うと、性能を出しやすい代わりに、消費電力と発熱・騒音は増えます。

RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition 96GB のような600W 級 GPUは、 そのまま全力で回すと電力もファン音も大きくなりがちです。 そこで、用途に応じて 300W〜600W の範囲で Power Limit を調整し、 「性能」と「電力・騒音」のバランスを取るのがポイントになります。

2. 事前準備（前提条件）

以下の前提で説明します。

  • OS: Ubuntu などの Linux 環境
  • NVIDIA ドライバがインストール済み
  • nvidia-smi コマンドが使える状態
  • Power Limit の変更には 管理者権限（sudo） が必要

まずはターミナルを開き、次のコマンドを実行してみてください。 

nvidia-smi

GPU の一覧が表示されれば、準備は完了です。

3. Power Limit の最小値・最大値を確認する

最初に、各 GPU が 何ワット〜何ワットの範囲で設定可能か を確認します。 以下のコマンドを実行します。 

nvidia-smi \
  --query-gpu=index,name,power.min_limit,power.default_limit,power.max_limit,power.limit \
  --format=csv

例として、RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition 4 枚構成では、次のような表示になります。

index, name, power.min_limit [W], power.default_limit [W], power.max_limit [W], power.limit [W]
0, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W, 600.00 W, 600.00 W, 600.00 W
1, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W, 600.00 W, 600.00 W, 600.00 W
2, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W, 600.00 W, 600.00 W, 600.00 W
3, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W, 600.00 W, 600.00 W, 600.00 W

各項目の意味は次の通りです。

  • index: GPU の番号（0, 1, 2, 3, ...）。後で設定するときに指定します。
  • name: GPU のモデル名。
  • power.min_limit [W]: 設定できる最小の Power Limit（W）。
  • power.default_limit [W]: 工場出荷時（初期状態）の Power Limit。
  • power.max_limit [W]: 設定できる最大の Power Limit。
  • power.limit [W]: 現在設定されている Power Limit。

上の例では、「この GPU は 300W〜600W の間で Power Limit を設定でき、現在は 600W になっている」ということが分かります。

4. どの値に設定するか決める

Power Limit は、表示された power.min_limit〜power.max_limit の範囲内であれば自由に設定できます。

  • 静音寄り・省エネ寄りで使いたい：300W 付近
  • 性能と電力のバランスを取りたい：400〜500W など中間の値
  • 性能最優先で使いたい：デフォルト（この例では 600W）のまま

最初は 300W や 400W など、少し低めから試してみて、 性能・消費電力・ファン音のバランスを見ながら調整していくのがおすすめです。

5. Power Limit を設定するコマンド

5-1. 単一 GPU の Power Limit を変更する

たとえば、GPU 0 を 300W に設定する場合は、次のコマンドを実行します。 

sudo nvidia-smi -i 0 -pl 300
  • sudo: 管理者権限で実行するために必要です。
  • -i 0: index 0 番の GPU を指定しています。
  • -pl 300: Power Limit を 300W に設定します。

5-2. 複数 GPU を同じ値に設定する（初心者向け）

RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition を 4 枚搭載していて、 4 枚すべてを 300W にしたい場合は、次のように 1 行ずつ実行していくのが分かりやすい方法です。 

sudo nvidia-smi -i 0 -pl 300
sudo nvidia-smi -i 1 -pl 300
sudo nvidia-smi -i 2 -pl 300
sudo nvidia-smi -i 3 -pl 300

それぞれの行で、対象の GPU 番号（index）が 0, 1, 2, 3 と変わっているだけです。

6. 設定が反映されたか確認する

Power Limit が希望の値になったかどうかは、次の簡易表示で確認できます。 

nvidia-smi --query-gpu=index,name,power.limit --format=csv

例：

index, name, power.limit [W]
0, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W
1, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W
2, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W
3, NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition, 300.00 W

このように power.limit が 300W になっていれば設定成功です。

7. よくある注意点・FAQ

Q1. sudo を付けないとどうなりますか？

A. Power Limit の変更は管理者権限がないと実行できません。 sudo nvidia-smi ... のように sudo を必ず付けてください。

Q2. 300W より小さい値や、600W より大きい値を指定するとどうなりますか？

A. power.min_limit より小さい値や、 power.max_limit より大きい値を指定するとエラーになります。 必ず、表示された範囲内の値を指定してください。

Q3. 再起動しても設定は残りますか？

A. 多くの環境では、OS を再起動すると Power Limit が デフォルト値（power.default_limit）に戻ることがあります。 常に同じ Power Limit で運用したい場合は、 サーバー起動時に自動で nvidia-smi -pl ... を実行する スクリプトや systemd サービスを用意する方法もあります。

Q4. Power Limit を下げると性能はどれくらい落ちますか？

A. ワークロードによって影響は異なります。 参考として、以下のベンチマーク記事では、 RTX PRO 6000 Blackwell サーバーエディション 4GPU マシンで 300〜600W の範囲で Power Limit を振りながら、性能・消費電力・ファン回転数がどう変化するか を実測しています。

→ RTX PRO 6000 Blackwell サーバーエディション 4GPU マシンでパワーリミットを落とすと、性能・電力・ファン回転数はどう変わるか

8. まとめ

  • nvidia-smi の --query-gpu オプションで、まずは 設定可能な範囲（min〜max） を確認する。
  • その範囲内で、用途に合わせて 300W〜600W のように Power Limit を決める。
  • sudo nvidia-smi -i GPU番号 -pl 値 で実際に設定する。
  • 最後に nvidia-smi --query-gpu=... --format=csv で反映を確認する。

Power Limit をうまく調整することで、 「性能は必要十分、電力と騒音はできるだけ抑える」 というバランスのよい運用が可能になります。 RTX PRO 6000 Blackwell サーバーエディションをお使いの方は、 ぜひ一度、300W や 400W なども試してみてください。