研究ノート H200 NVL Quantum ESPRESSO Allegro / NequIP LAMMPS

LLZO短絡(デンドライト)を「界面成長」から「粒界×Li偏析」へ:前駆現象から最短で攻める

更新日:2025-12-13

方針アップデート:本シリーズの最終ゴール(LLZO短絡/デンドライト問題にAI-MDで迫る)は維持したまま、まずは LLZO粒界におけるLi偏析・集積(短絡の前駆現象) を優先して解析します。

これまで進めてきた QE →(DFTデータ)→ ML-IAP(Allegro/NequIP)→ LAMMPS(AI-MD)→ 可視化 のパイプラインはそのまま流用でき、既存記事の内容も粒界編に直結します。

目次

なぜ「粒界×Li偏析」を先にやるのか

LLZO/Li界面で“デンドライト成長そのもの”を狙う場合、状態空間が広く(界面状態、温度、応力、欠陥、表面被覆、サンプリングの多様性など)、初手から「再現性の高い定量結果」まで到達するハードルが高くなりがちです。

一方で、短絡に至るまでには「前駆現象」が存在し得ます。そこで本シリーズでは、現象を段階分解して、まずは電解質側で比較的“確実に評価できる”テーマから最短で攻めます。

今回の立て付け

  • 前駆現象(電解質側):LLZOの粒界・欠陥・局所歪み近傍で、Liが偏析/集積しやすい条件は何か?
  • 界面側(後続ステップ):界面近傍での供給と、最終的な短絡(フィラメント)シナリオへ接続

粒界編で出す成果(KPI)

1) 絵として見せる(“回せる3D”の主役)

  • 粒界近傍の Li濃度ヒートマップ(時間発展)
  • Li集積(クラスター)の出現条件(温度/粒界種/欠陥など)
  • bulk と粒界での 拡散経路の違い(3Dで直感的に)

2) 数字として示す(比較できる定量KPI)

  • bulk vs grain boundary の 拡散係数 D(T)
  • 活性化エネルギー Ea(Arrheniusフィット)
  • (任意)Nernst–Einstein による イオン伝導度 σ 推定
  • (任意)粒界種類・欠陥種類・歪み条件ごとの 偏析の強さの比較

粒界は「巨大セル × 長時間 × 条件スイープ」が効くため、4GPU/8GPUのスループット差を成果として見せやすい題材です。

ワークフロー(QE → Allegro/NequIP → LAMMPS)

  1. Quantum ESPRESSO でDFTデータ(構造・エネルギー・力・応力)生成
  2. データを extxyz 等へ変換(学習用データセット化)
  3. Allegro/NequIP で学習(必要なら不確かさを見て追加DFTへ)
  4. LAMMPS(Kokkos) で大規模AI-MD(粒界を含む巨大セル・長時間)
  5. 解析(MSD→D→Ea、局所解析、クラスター解析)+ 回せる3D で共有

新ロードマップ(界面編は後続として維持)

【最終ゴール】
LLZO短絡(デンドライト/フィラメント)を、AI-MD(QE→Allegro→LAMMPS)で
「再現性あるKPI」と「回せる3D」で説明できる状態にする

        ┌────────────────────────────────────────┐
        │ 共通パイプライン:QE → ML-IAP → LAMMPS → 3D │
        └────────────────────────────────────────┘
                           │
                           │(まず“確実に出る前駆現象”から)
                           ▼
┌───────────────────────────────────────────────────┐
│ Track-GB(優先):LLZO粒界×Li偏析(前駆現象)                         │
│  EpGB0-R:粒界モデル構築・DFTサンプリング方針                           │
│  EpGB1-R:Allegro学習(不確かさ→追加DFTの回し方)                       │
│  EpGB2-R:LAMMPS大規模MD(偏析・拡散D/Ea/σ、回せる3D)                   │
└───────────────────────────────────────────────────┘
                           │
                           │(粒界で得た知見を“界面の短絡シナリオ”へ接続)
                           ▼
┌───────────────────────────────────────────────────┐
│ Track-IF(後続):LLZO/Li界面(長時間MD、温度・被覆率・ひずみ)             │
│  既存記事群の拡張として継続(ただし公開順序は粒界編を優先)               │
└───────────────────────────────────────────────────┘
      

シリーズ目次(更新版)

既存:界面編+パイプライン構築(これまでの記事)

新設:粒界編(ここから公開していく)

  • EpGB0-R(予定):LLZO粒界モデル構築とDFTサンプリング方針
  • EpGB1-R(予定):Allegro学習(不確かさ→追加DFT→再学習)
  • EpGB2-R(予定):LAMMPS大規模AI-MD(偏析・拡散KPI・回せる3D)

次回予告:EpGB0-R の想定内容

次回(EpGB0-R)は、粒界×Li偏析に必要な「最小の設計図」をまず公開します。

  • 対象とする粒界の選び方(まずは2〜3種類に絞る)
  • DFTサンプリング設計(どの構造を、どの温度・どの条件で取るか)
  • 学習データの“漏れ”を減らすための注意点(前処理・ラベル・分割)
  • LAMMPS側の解析項目(MSD、局所MSD、クラスター、粒界近傍だけの統計)

QE × Allegro/NequIP × LAMMPS を H200 NVL 4GPU/8GPU で回す構成