Ep0-R|LLZO-Li Dendrite Growth: DeepMDからML-IAP (Allegro) への世代交代
Ep0-R|LLZO-Li Dendrite Growth: DeepMDからML-IAP (Allegro) への世代交代
追記(2025-12-13)
本シリーズは方針を更新し、まず LLZO粒界におけるLi偏析・集積(短絡の前駆現象) を優先して解析します。最新ロードマップは 研究ノート(ハブ) をご覧ください。
なお本稿は「DeepMD世代 → E(3)等価なML-IAP(Allegro)へ移行する理由と全体像」を示す導入編として位置づけます(界面シナリオは後続ステップとして維持)。
H200 NVL × Quantum ESPRESSO / ML-IAP (Allegro) / LAMMPS
LLZO短絡(デンドライト/フィラメント)問題に対して、AIポテンシャルで高精度・高速に迫る次世代ワークフローを構築します。
DeepMDを用いた従来手法をベースに、E(3)等価性を備えたML-IAP (Allegro) へ移行し、GPUスケーラビリティと物理的整合性を両立します。
方針更新により、まずは「界面成長そのもの」ではなく、粒界(grain boundary)でのLi偏析・局在を短絡の前駆現象として定量化し、そこから界面シナリオへ接続していきます。
1. 背景:DeepMDの限界と次世代AI-MDの必要性
DeepMD は第一原理分子動力学(AIMD)の高速化を実現し、実用上の有力な選択肢として広く使われてきました。一方で、近年は E(3) 等価性(回転・反転を含む幾何対称性)をより明示的に扱えるモデルが登場し、少ないデータでの汎化や、複雑な局所環境(欠陥・界面・粒界など)への適用が議論されるようになっています。
ML-IAP (Allegro) は PyTorch ベースで E(3) 等価な表現を扱えるため、物理整合性と学習効率の観点で“次世代”として検証する価値があります。
また、大規模 GPU 構成ではモデル推論コストだけでなく、MD側(領域分割や近接リスト、通信など)の効率も支配的になります。本シリーズでは、LAMMPS(Kokkos) を含む実行系として、H200 NVL(NVLink/NVSwitch)での実効スループットも含めて評価します。
2. 新ワークフロー概要
- QEでDFTデータ(構造・エネルギー・力・応力)生成(対象:まずLLZO粒界、後続で界面へ)
- データを extxyz 等(Allegro/NequIP 学習に投入できる形式)へ変換し PyTorch で学習
- LAMMPS (Kokkos) で AI-MD 実行(大規模セル・長時間・条件スイープ)
- 解析(偏析・拡散・局在・クラスター等)+ 3D HTML で可視化(“回せる3D”)
3. 初期結果
初期検証として、H200 NVL × 8 GPU 構成で従来 DeepMD 比 約 1.8× のスループットを確認しました(同一系・同一規模ベンチの範囲)。また、Li イオン経路をナノ秒スケールで安定追跡できる見通しが立ちました。
今後は、題材を「粒界×Li偏析(前駆現象)」に寄せつつ、H200 NVL(4GPU/8GPU)での再現性あるスケーリング実測と、KPI(D/Ea 等)を揃えて公開していきます。
4. 今後の展開
次稿 Ep1-R では、LLZO/Li 界面の構築と DFT データ準備から、Allegro 学習データへの変換までを解説します。
ただし、最新方針ではまず LLZO 粒界(grain boundary) のデータセット構築と Li 偏析・拡散の定量化を優先し、その知見を界面シナリオへ接続していきます(詳細はハブ記事参照)。
現在の進行状況と今後の予定(Ep0-R アップデート)
本シリーズで掲げた「QE × ML-IAP (Allegro) × LAMMPS」による AI-MD 基盤は、すでに GPU 版 Quantum ESPRESSO 7.4.1 を用いた DFT AIMD 実行段階に到達しており、AIMD から得られた全エネルギー・力・応力を含むラベル付きデータを extxyz 形式へ変換するパイプラインの整備を進めています。DeepMD 世代で培ったワークフローをベースにしつつ、E(3) 等価性を備えた ML-IAP (Allegro) で同じ物理を再現するための “橋渡し” を進めている状況です。
今後は、単一の LLZO/Li 界面だけでなく、バルク LLZO・バルク Li、温度や Li カバー率の異なる界面、軽いひずみを加えた構造などを Quantum ESPRESSO で追加サンプリングし、より広い状態空間をカバーする DFT データセットを構築していきます。
ただし公開順序・優先順位としては、まず LLZO 粒界(grain boundary)構造を追加サンプリングし、Li の偏析・集積・拡散(短絡の前駆現象)を定量化します。これらのデータは Ep1-R で扱う DFT データ生成ワークフロー、Ep2-R の Allegro 学習・H200 NVL 上でのスケーリング評価、Ep3-R の LAMMPS + ML-IAP による大規模 AI-MD と 3D 可視化へと順次接続していく予定です。粒界で得た知見を界面シナリオへ接続し、“世代交代”の実像と、短絡理解への近道を示していきます。