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Monthly Archives: August 2025
Monthly Archives: August 2025
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Ken Hanabusa
- August 25, 2025
13
第2回: シリコンにフェムト秒レーザーで穴を開ける——GPUシミュレーション“予習編”
要約:本番の「Si 薄膜 × フェムト秒レーザー」分子動力学を成功させるため、まず Quantum ESPRESSO で基礎データを収集しました。A100 80GB ×4 機での実測時間を整理し、どのケースが穴あけシミュレーションの何を支えるのかをストーリー仕立てで説明します。さらに、H200 NVL に置き換えた場合の時間短縮効果も展望します。
TL;DR:液体化と空孔形成が最重量級。A100×4 で 1 ステップ 70–95 秒、総時間は 2.8–3.7 時間級。Bulk/Strain は 1 ステップ 2–3 秒台で網羅向き。H200 NVL×4 なら概ね 1.7–2.3×(推定)短縮、8GPU でさらに半減レンジ。
なぜ“予習”が必要か:ケースの役割を物語で理解
① Bulk(バルク)=「健康診断」
シリコン結晶の標準状態を決めます。これがないと、レーザー照射後の「異常」を正しく比較できません。
② Strain(ひずみ)=「耐久テスト」
引張・圧縮で材料の応力–歪み特性を把握。レーザーによる瞬間的な膨張・収縮を理解する基盤となります。
③ Liquid(液体化)=「氷が解ける瞬間の再現」
レーザー直下では Si が溶融します。液体状態を正しく記述できなければ、溶け拡がりや再凝固の描像は成立しません。計算負荷は最重量級。
④ Void(空孔)=「割れ目のタネ」
欠陥や空孔は、穴あけの起点になります。局所的な応力集中や熱流入を理解するために必須です。
A100×4 実測まとめ(WALL 時間)
総時間ランキング
| カテゴリ |
ケース |
総時間 (秒) |
備考 |
| 最重量級 |
strain_extra/strain_extra_T600K |
13260 |
ひずみ拡張大規模 |
| 重量級 |
voids/void_strain_+00pct_T300K |
10500 |
空孔シミュレーション |
| 重量級 |
voids/void_strain_+05pct_T300K |
10080 |
空孔シミュレーション |
| 液体 |
liquid/liquid_T3000K |
1115.99 |
溶融 Si 高温 |
| 液体 |
liquid/liquid_T2000K |
570.22 |
溶融 Si 中温 |
1ステップあたり時間ランキング
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Ken Hanabusa
- August 24, 2025
25
【予告編】GPU で拓く未来のシミュレーション —— シリコン薄膜 × フェムト秒レーザー
要約:これまで困難だった「シリコン薄膜にフェムト秒レーザーを照射し、原子レベルで穴が形成される過程」を、DeepMD + LAMMPS + GPUサーバーという最新スタックで再現する試みが始まりました。この記事は本編シリーズの予告編です。
TL;DR:「現実には絶対に観測できない瞬間」を GPU によるシミュレーションで可視化。その迫力と実用価値をお届けします。
1. 誰も見たことのない現象を映像化する
シリコン薄膜にフェムト秒レーザーを照射すると、わずか数百フェムト秒の間に原子が弾き飛ばされ、穴が形成されます。
これまでの理論や実験では「起きる」ことは分かっても、その ダイナミクス を再現するのはほぼ不可能でした。
しかし今、GPU を活用した新しいアプローチで、その瞬間を映像化できるようになったのです。
2. これまでの壁 —— なぜ不可能だったのか?
- 第一原理分子動力学(DFT-MD)はサイズ・時間スケールの制約が大きすぎた
- 古典ポテンシャル(Tersoff 等)はレーザー誘起の非平衡現象を正しく記述できなかった
結果として「穴が空くシーン」を原子スケールで追いかけることは夢物語でした。
3. DeepMD が開いた突破口
Deep Potential Molecular Dynamics (DeepMD) は、第一原理計算(Quantum ESPRESSO)で生成したデータをディープラーニングで学習し、現実的な時間・サイズでの分子動力学を可能にします。
これにより、従来の 1,000 ステップ級の制約を超え、数百万ステップにわたるシミュレーションを GPU で実行できるようになりました。
4. 実用的価値とインパクト
- 半導体加工:EUV を超える次世代微細加工の理解
- 光応答材料:耐レーザー性や新規設計への応用
- 教育・可視化:研究室や展示で「原子の世界」を直感的に伝えられる
つまり「派手で人目を引く」だけでなく、「研究・産業的に意味がある」テーマなのです。
5. GPU サーバーの役割
今回の挑戦は A100 80GB ×4GPU サーバーを用いて進めています。
本編記事では、ここで得られた計算時間を基準に、H200 NVL 4GPU / 8GPU
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Ken Hanabusa
- August 24, 2025
55
第1回・入門編:Quantum ESPRESSO で何を計算すれば「シリコン薄膜 × フェムト秒レーザー」を再現できるのか?
要約:この記事では、シリコン薄膜にフェムト秒レーザーを照射して穴を開けるシミュレーションを行うために、Quantum ESPRESSO(QE)で必要となる計算の種類と役割を整理します。「なぜこの計算が必要か」を理解することで、後続の DeepMD 学習や LAMMPS 実行の意味がつながります。
TL;DR:基礎構造 → 表面 → 欠陥 → 高温挙動。この順で QE のデータを揃えれば、レーザー照射のダイナミクスを DeepMD で学習し、LAMMPS によって原子レベルでの「穴あき」を再現できます。
目次
- バルク計算(シリコン結晶の基準点)
- 薄膜(スラブ)計算
- 欠陥・空孔計算
- 液体相(高温シリコン)計算
- 歪み(strain)計算
- これらがどう役立つか(DeepMD 学習との関係)
1. バルク計算 —— シリコンの「教科書的」基準
最初に必要なのは シリコン結晶(ダイヤモンド構造)のバルク計算です。
ここで得られる格子定数・エネルギー・力は 全ての基準点になります。
たとえば、レーザーで加熱する前の「健全なシリコン」の姿を定義する役割です。
2. 薄膜(スラブ)計算 —— 表面を作る
次に 薄膜(スラブ)構造を計算します。
レーザー照射は基本的に「表面現象」なので、周期境界の中にシリコン薄膜+真空層をつくり、表面の安定性や原子の動きやすさを評価します。
ここがなければ「穴が開く場所そのもの」がモデル化できません。
3. 欠陥・空孔計算 —— 穴のタネを仕込む
レーザーが当たった瞬間にすぐ原子が飛び出すわけではなく、欠陥や空孔が拡大していくことで穴が成長します。
そこで、シリコン結晶や薄膜に原子を抜いた状態を作り、「欠けたときの力学応答」を QE で計算しておきます。
4. 液体相(高温シリコン)計算 —— 溶ける過程
レーザーで数千 K に加熱されたシリコンは 一瞬で液体化します。
そのため、液体状態のシリコンを QE で分子動力学(MD)しておくことが重要です。
これにより「固体から液体へ移行する原子の動き」を学習データに反映できます。
5. 歪み(strain)計算 —— 引き延ばし・圧縮の効果
最後に strain(引張・圧縮)を加えた構造
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Ken Hanabusa
- August 24, 2025
52
フェムト秒レーザーとは何か――シリコン薄膜に穴を開ける最先端技術
要約:フェムト秒レーザーは「1フェムト秒=10-15秒」という極短パルスの光を発する特殊なレーザーです。この超高速パルスにより、物質の熱拡散を抑えながら原子・分子レベルで精密加工が可能になります。従来のレーザーでは困難だった「シリコン薄膜に微細な穴を開ける」シナリオが現実の技術応用として見えてきました。
TL;DR:フェムト秒レーザーは「熱で溶かす」前に加工が終わる。だからシリコン薄膜にナノスケールの穴を正確に開けられる。
1. フェムト秒レーザーとは?
フェムト秒レーザーは極めて短い時間幅の光パルスを照射するレーザーで、代表的には「チタンサファイアレーザー」などが使われます。その特徴は:
- パルス幅が極端に短い:10-15秒単位
- 高ピーク強度:瞬間的に巨大なエネルギーを物質表面に集中
- 熱拡散を抑制:熱が広がる前に加工が完了するため、周辺に損傷を与えにくい
2. なぜシリコン薄膜に穴を開けるのにフェムト秒レーザーを使うのか
従来のナノ加工手法(ナノインプリントや電子線加工)には以下の課題がありました:
- 加工速度が遅い
- 熱による変形・欠陥が避けられない
- 大面積加工への展開が難しい
フェムト秒レーザーはこれを克服します。
- 熱影響が極小 → 周囲の結晶を壊さず穴を開けられる
- 高い再現性 → 同じ条件なら同じサイズの穴が形成可能
- 高スループット → レーザーパルスをアレイ化すれば大面積加工も視野に
3. 実用的価値:どんな応用があるのか
- 半導体微細加工:次世代トランジスタや光学デバイスの作製
- フォトニクス:シリコンフォトニクス用のナノホールアレイ形成
- バイオ応用:センサー基板やDNAチップへの加工
つまり「現実には目で見られない微細な加工」を可能にすることが、フェムト秒レーザーの実用的価値です。
4. シミュレーションでの挑戦とGPUの役割
ただし、このプロセスを「原子レベル」でシミュレーションするのは極めて難しい課題でした。従来の分子動力学や第一原理計算では計算コストが膨大で、ナノ秒スケールすら現実的に扱えませんでした。
ここで登場するのが DeepMD(機械学習ポテンシャル) と GPU サーバーです。Quantum ESPRESSO で生成したデータを DeepMD で学習し、LAMMPS
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Ken Hanabusa
- August 13, 2025
60
CPU で材料計算を回しているなら——いまが GPU への乗り換え時。A100 実測を踏まえた H200 NVL 141GB(PCIe)導入ガイド
CPU で材料計算を回しているなら——いまが GPU への乗り換え時。A100 実測を踏まえた H200 NVL 141GB(PCIe)導入ガイド
要約:量子化学・固体計算を CPU で回している研究室では 1 本の SCF にも何十分もかかるのが日常です。この記事では Quantum ESPRESSO(QE)GPU 版を A100 80GB ×4 機で実測し、最短 47.35 秒を確認しました。比較用に CPU 64 MPI では 10分58.33秒(658.33 秒)で、約 13.9× 高速化です。さらに H200 NVL 141GB(PCIe)×4 なら、HBM 帯域と容量の伸びから おおむね 1.7〜2.3×(推定)短縮が期待できます。つまり「分」単位の計算が「十数秒」へ。
TL;DR:CPU 64MPI ≈ 10分58秒 → A100×4 ≈ 47秒(13.9×)。H200×4(推定)で 20〜30 秒台のレンジ。
目次
- なぜ今 GPU なのか(Gaussian ユーザーにも刺さる話)
- テスト環境(読者マシン比較用スペック表)
- ベンチマーク条件(QE / Au 表面「DEISA pw」)
- 結果:CPU vs GPU の実測比較と 1 / 2 / 4 GPU スケール
- H200 NVL 141GB ×4 はどこまで短縮できるか(推定)
- Gaussian ユーザーへの現実的な移行ライン
- 再現方法とスクリプト
- どの構成を選ぶか:1 / 2 / 4 GPU の目安
1. なぜ今 GPU なのか(Gaussian ユーザーにも刺さる話)
Gaussian を長年お使いの方ほど CPU を積み増すことで凌いできましたが、表面・周期境界系では FFT/BLAS とメモリ帯域がボトルネックになりがちです。QE(平面波・擬ポテンシャル)はここを GPU に逃がせます。FFT、ハミルトニアン作用、密度生成など重い箇所を GPU に載せ、PCIe/NVLink の転送を抑える実装が成熟。結果として、A100×4 実測で「分」が「秒」になりました。
2. テスト環境(読者マシン比較用スペック表)
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